2020年度 会長挨拶

日本女性法律家協会  
会長 佐貫 葉子(弁護士 33期)

私は、2020年6月の総会において会長に就任いたしました。

ご挨拶に先立ち、このたびの新型コロナウイルスの感染により、健康を害された方々に心よりお見舞いを申し上げますと共に、全力で治療や看護にあたられている医療従事者の皆様に深く敬意を表します。

当協会は、女性の裁判官、検察官、弁護士、法学者から構成される会員800名からなる全国組織の団体です。創立は、1950年に遡ります。GHQの法務部にいたアメリカの女性弁護士の示唆を受け、女性法律家10余名で設立されました。法の下における男女の平等を規定した日本国憲法が施行されてまだ3年余しか経ていない時期であり、設立メンバーの新時代に向けた高い志と熱意に思いを馳せるといつも胸躍るものを感じます。

その後、時代は、戦後の復興期、高度成長期、バブル時代、平成不況期、令和と大きく変化いたしました。この間、当協会は、時代に即して、会員相互の研修・交流等のほか、司法及び法学並びに女性の地位に関する調査研究と様々な意見表明、国連NGO団体への参加、他の女性団体との交流、市民のための法律相談等の活動を続けてまいりました。この間の活動や諸会員個々の仕事内容や思いについては、本年6月に発行した「日本女性法律家協会70周年の歩み~誕生から現在、そして未来へ~」(司法協会発行)に詳しく紹介されておりますので、是非お手に取っていただければと存じます。

現在は、特に2000年代以降急速に進んだグローバル化とデジタル化の影響で社会経済構造や雇用制度等が変化し、価値の多様化が進む一方で、格差が広がり様々な歪みや問題が生じています。このような時代背景の下、当協会は2000年の50周年記念シンポジウムでは、「家族の未来、社会の仕組み」をテーマとして、2010年の60周年記念シンポジウムでは、「多様な生き方と法のこれから」をテーマとして、議論を深めてまいりました。そして本年、70周年においては、混沌とした時代にあって、誰もが社会の一員として等しく尊重され、共に生き、未来に向けて進むために、当協会がどのように役割を遂行すべきかを語り合うために「共生のみらいへ」というテーマでシンポジウムを企画いたしました。残念ながら、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために1年の延期(2021年6月5日開催予定)を余儀なくされましたが、新たなシンポジウムの態様(ウエビナ―など)を含めて近々具体的なご提案をいたします。

なお、思いもかけないコロナ禍で急に浸透したオンライン会議により、地方の会員の方々とも即時に面談ができるようになったのは、画期的なことで、今後の当協会の活動の幅を広げるのに大きく寄与すると期待されます。

最後に、一言申し上げますと、我が国は、世界フォーラムから毎年発表されるジェンダーギャップ指数が、極めて劣位であることは皆様ご承知のとおりです。意思決定への参画やリーダー層への登用が少ないことが要因ですが、それは我が国に根強く残っている性別役割分担意識に起因するものと考えます。歴史・文化に根付くものなのでその払拭は容易ではなく、幾ばくかは私たちにも内在化しているかもしれません。当協会は、女性法律家専門集団として、個別事象の検証・分析を通じて、当該意識の払拭や打破について意見表明を行ない、あるいは講演会や研究会を通じて社会に提言していく役割があると考えます。

どうぞ積極的なご意見をお寄せいただきたいと希望いたします。