どうなる選択的夫婦別姓

どうなる選択的夫婦別姓

日本女性法律家協会 会長 弁護士 横溝久美

一.2025年10月22日(水)午後2時から、選択的夫婦別姓制度実現に向けての議員要請(これで何度目でしょうか。私は日弁連理事時代を含めて3度目です)に行ってまいりました。

1.⑴ 全国司法書士女性会 鵜川智子会長・全国女性税理士連盟 奥田よし子会長・同連盟 毛利麻子相談役といった錚々たる先生方と一緒に、先ずは高市早苗新首相の903号室へ。もちろん不在でした。田中豊秘書に「貴方のボスがイチバンの反対勢力なのですよ」と心の中で叫びながら名刺を渡しました。
⑵ 続いて504号室 野田聖子議員…不在と思いきや玄関先…ではなく部屋入口でばったり遭遇いたしました。リアル聖子さん、TVで拝見するよりも凜とした佇まい。「公明・立民・国民への働きかけが肝要」との言。そうですよね、野党が強いご時世ですもの。

2.⑴ その後、一般社団法人「あすには」などが主催した「選択的夫婦別姓制度の導入を目指す意見交換会(井田菜穂代表理事が進行役)」へ。その席で印象に残ったことをいくつか、
① 辻元清美参議院議員(リアルはこれまた凜でした)曰く「自民党議員でも理論や本音では賛成派が多い筈。しかし、党議拘束等のハードルがあるのではないか?」
② 打越さくら参議院議員曰く「議員は当選しなければ活動の仕様がない。推進派議員候補の選挙応援実働は重要」
③ 吉良よし子参議院議員の「夫の氏を変えたが、その後の夫の苦労ったらぁ!!」は生々しくて説得力がありました。
⑵ 自民と維新との12か条も話題になっていました。いずれにせよ自民・維新は反対、それを動かすためには野田聖子議員ご指摘のように野党が結束して推進せんとすること(参政・保守は反対、れいわは?)、野党結束によって自民党の党議拘束が外れれば山は動く。
⑶ そうそう、ラサール石井参議院議員とも名刺交換しました。
そうそう「夫婦同一性・女性天皇反対・靖国参拝賛成・歴史認識美化」が、保守派の4点セットなのだそうです。

3.意見交換会の後、有村治子参議院議員(1015号室)・打越さくら参議院議員(901号室)に赴き、秘書さんに名刺を渡してきました。

4.⑴ 選択的夫婦別姓と旧姓通称使用は二者択一・二律背反関係にあるわけではなく、両立する制度。にも拘わらず「どちらか一方!」「どっちを取る!?」というふうに捉えられがちです。「選択肢が増えるだけ」ということを、社会全般に理解してもらわなければならないのではないでしょうか。(意見交換会でも述べさせていただきました。)
 但し、「旧姓通称使用が拡大・整備されたのだから 選択的夫婦別姓を制度化する必要性などないでしょう」と換骨奪胎されることは警戒しなければなりません。
⑵「イケイケ自己中の女性たちが我が儘を言っているだけ、私たちには関係ない」と思われがち。だから、所謂専業主婦層の理解を深める努力も必要です。(どなたかが指摘しておられたし、私もそう思います。)
⑶ 上記⑵とも関連しますが、「怖い女性たちが声高に叫んでいる」と、男女問わず拒否反応・抵抗感・忌避感・そして嫌悪感すら覚える人がいること否めません。そこに「家族の一体性」という巧言令色・甘言密語が合体すると夫婦別姓反対へと傾きます。やはりここは、誤解を解いていく必要がありましょう。
 課題山積ですが、後戻りはできません。

5.さてさて22日はその後、鵜川智子司法書士・奥田よし子税理士・毛利麻子税理士と東京駅で打ち上げ。鵜川先生の強烈requestで鰻&ビール。
 刺激的で美味しく楽しい1日でした。

二.10月29日(水)午後5時30分から、「日弁連第2弾選択的夫婦別姓制度の速やかな導入を求める院内学習会」に参加いたしました。日弁連(人権第2課)の熱意が感じられる素晴らしく感銘深き学習会でした。

1.心に残ったキーワードとしては、
・結局「同一性の立証責任」は妻が負うことになる(実際、男女問わず戸籍上の氏を変えることにより様々な負担あり)
・国際的に活躍しようとする(特に女性の)ハードルになる
・「窮余の一策」の法制化はNG(櫻井龍子元最高裁判事)
・アイデンティティの問題(宇賀克也元最高裁判事)
・社会に選択肢を増やす、名乗りたい名を名乗る、同一性を選択したいのであればそれを選択すれば良い…それの何処に問題が?(経団連・次原悦子さん)
・ダブルネームによる(特にビジネスにおける)混乱及び不利益(経団連・次原悦子さん)
議員さんたちから、
・戸籍上の氏が記載された当選証書はショックだった
・自民党議員にもグラデーションあり、党議拘束を外させることが肝要
・野党が(法案で)結束しなければ
・「男女」は勿論、「人権」の問題
・名前(氏)を変えないで結婚したいだけなのに
・国家を構成するのは「家」ではなく「個人」
・世の多くの男性は氏を変えたことがないから、その大変さに気付かない
・ダブルネームは面倒だし、「どちらが本当の私?」となる
別姓夫婦の子どもたちから、
・両親を法律上の夫婦として認めて欲しい
・父母の氏が違うことで差別されたり「家族の一体性」が損なわれたりしない
・なのだから(子どもが可哀想は的外れなのだから)、それを選択的夫婦別姓反対の論拠にしないで欲しい
・父母の氏が違うからではなく、法律的に夫婦として認められないから、子どもへの差別に繋がるのでは?
以上が感銘を受けたキーワードです。

2.私としては、宇賀さんの「問題点の客観的実証データがないと違憲判決は出されない」という言葉に、司法(違憲判決)のハードル高し!と思いました。

3.60歳を過ぎた私の周囲は(極めてつきの仲良しを含め男女問わず)、<今更感>が強いのです。「もう結婚(離婚)しちゃったし、もういいや」って、臨場感がないのです。
となるとやはり、世論に訴えるターゲットは若い世代、これから結婚しようとしている世代です。誰だって好きな人と結婚したい。そのときに「どっちの氏を名乗るのよ問題」で法律婚を諦めるなんて哀しすぎます。こんなことでは、少子化も進んでしまうのではないでしょうか。ここは、次世代を担う若者たちのために一肌脱ぎましょう。
2025年10月30日記