「民法の成年年齢の引下げについての中間報告書」に関する意見書について
岡部 喜代子
慶応義塾大学教授
2009年6月
法制審議会民法成年年齢部会は民法の成年年齢の引下げについて審議し、昨年12月にその結果を中間報告書として取りまとめた。平成21年1月30日を期限にパブリック・コメントの募集があったので、有志による数回の議論を重ねて、以下の通りの意見書を提出したものである。
このような審議がなされるに至ったのは、平成19年5月に成立した日本国憲法の改正手続きに関する法律第3条が「日本国民で年齢満18年以上の者は、国民投票の投票権を有する。」と定め、合わせて同附則3 条に「満18年以上満20年未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう、選挙権を有する者の年齢を定める公職選挙法、成年年齢を定める民法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする」とされたことが契機となっている。これを受けて法務大臣から法制審議会に諮問がなされ、同会は民法成年年齢部会を設置して検討を重ねた。
報告書は、項目としては「民法の成年年齢を引き下げた場合の影響及びとるべき措置」「民法の成年年齢引下げの当否等」「引下げをする場合に必要となる施策の実行について」等、全体として引下げが前提であるかのような観を呈しているが、その内容はほとんど両論併記であった。また、若干検討項目の不十分あるいは内容の不明瞭な記述もあり、民法の成年年齢の引き下げという重大問題の審議としては物足りなさを感じた。今後なお十分な検討がなされることを期待する。